青春がしみじみよみがえる読後感

公開日: 更新日:

「東大駒場寮物語」松本博文著(KADOKAWA 1800円+税)

 ボロイ、汚い、薄暗いのネガティブ要素満載とされた東京大学駒場キャンパスに2001年まで存在していた寮の歴史と、そこに住んでいた人々が織り成す数々の珍事件やバンカラ騒動を、しんみりとした筆致で記したノンフィクションである。「オレたちの税金で安く住みやがって、このクソ特権階級東大生どもめ!」といった感覚を持つ方もいるかもしれないが、そう言わずに本書を読んでいただきたい。というのも、今のオッサン、爺さんが経験したような古き昭和のバンカラ学生生活が、そこには描かれているからだ。

 東大というバイアスを持つことなく読み続ければ、「オレにもこんな時代があったなぁ……」と懐かしがる感覚を抱けるだろう。印象的なシーンを紹介する。駒場の商店街にあった寮生御用達のそば屋「山口屋」が量を減らしたり、値上げをした時のエピソードだ。
〈寮内では「山口屋対策委」という、大仰な名前の委員会が立ち上げられた。委員会は寮生にアンケートを取って、その結果をもとに山口屋と交渉する。山口屋の店主は、さぞびっくりしたことだろう。その結果、値段やボリュームは、以前のままに戻った〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭