「幹事のアッコちゃん」柚木麻子著
忘年会プロデュースで仕事の面白さに開眼
営業第2課の新人、久瀬涼平は憂鬱でたまらない。課の名物行事である忘年会幹事は新人の仕事。でも、店も余興も決まらない。ああ面倒くさい。第一、会社の人間となんか、飲みたくもない。
こだわりが強く、自意識過剰、生意気で妙に冷めている。そんな今どきの若者・涼平の前に、おかっぱ頭の大女が現れた。チェーン展開で成功した飲食業「東京ポトフ&スムージー」の社長・黒川敦子、人呼んでアッコちゃん。翌日から、アッコちゃんが幹事を務める忘年会に参加させてもらいながら、涼平は忘年会プロデュースの極意を学び、成長していく。
「読むと元気が出る」と働く女性たちに人気の小説シリーズ第3弾。表題作のほか、3作が収められている。成功者アッコちゃんをねたむ中年女性記者と関わることになる「アンチ・アッコちゃん」。仕事に追われる元部下に、時間の使い方を伝授する「ケイコのアッコちゃん」。そして、会社のM&A話に将来が揺れる「祭りとアッコちゃん」。
ド迫力があってカッコいいサクセスウーマンの顔と、自分に正直でカッコつけない素顔。アッコちゃんは人を引き寄せ、人を勇気づける。幾多の自己啓発本より、はるかに心に効く一冊。(双葉社 1200円+税)