作家が照らし出す 迷宮入りした凶悪事件の謎
「モンスターマザー」福田ますみ著
2005年12月、長野県北佐久郡の実業高校で名門バレー部員の男子生徒が自殺。母親は部内のいじめが原因としたが、校長は記者会見で否定。逆に母親が原因とにおわせた。学校には抗議の電話が相次ぎ、バレー部は大会出場を辞退。母親は校長を殺人と名誉毀損で告訴。さらに県と別の生徒親子をも損害賠償で訴えた。
しかしその後、刑事告訴は不起訴。民事は校長側の全面勝訴に終わった。それどころか母親についた人権派弁護士は所属の東京弁護士会から戒告処分を受けたのである。
本書はこの泥仕合の背景を丹念に取材したルポ。事件全体の「真の加害者」として母親を語気鋭く指弾している。(新潮社 1400円+税)