「絶対また行く料理店101」横川潤著
著者の食に対する気迫と気合がひしひしと感じられる料理店紹介本だ。
飲食のガイドブックといえばおいしそうに写された料理や酒に、店長や人気シェフの写真と、聞きかじっただけのコメントを添えて一丁あがり! といった類い――が横行するが、文章だけで料理店のことを紹介しようとすると、時間もお金もその何倍、何十倍もかかる。
1回か2回行っただけで店の印象や料理のことなどを書いてしまえる、いわゆる素人さんのブログ感想文と、出版に値する文章の表現と中身は、こんなに違うのか! と再認識させられる。
著者は文教大学観光学科准教授。ニューヨーク大学大学院でMBA取得という肩書で食と食産業関連の著作を持つ。
本書の初出連載時「kotoba」(集英社)のタイトルは、「この店はなぜ繁盛しているか」だったというが、本文を読むかぎり「絶対また」「行きたい」と「行かなきゃならない」という、気持ちが前面に出たタイトルによって、より内容にふさわしくなった。
各料理店については、実際に手に取って読んでもらうしかないが、(うーむ、こんな素晴らしい店があのエリアに!)とか、(おう、この店には行ったことがあるが、ここに移ってきたのか!)などとフセンを貼ったのが三十数カ所。フレンチ、イタリアン、割烹、中華料理など、きら星のごとく名店が列記されるが、アンコウ鍋やドジョウの老舗、さらにはラーメンの店まで紹介される。
たとえば、「かつて暇があれば京都で遊び歩いていた頃、旅のおしまいはこの店と決めていた」のが、「黒いラーメンと黒いチャーハン」の「新福菜館」。また、「ハルピンラーメン」は「まったくもって私的な理由で最後の午餐にふさわしい」といった具合。
著者は、現在、飲酒を完全に断っているという。体にダメージを受けることなく、なにかに徹することなどできない。(集英社インターナショナル 1000円+税)