「銀座百話」篠田鉱造著
明治7年、銀座2丁目の横辻で、むしろを敷いて小机を前に「八犬伝」を読む少年講釈師がいた。朝野新聞社社長の成島柳北が人垣からのぞくと、隣に付き添っている老婦人に見覚えがある。かつて世話になった元旗本の老母だった。
翌日、その自宅を訪れて事情を聴くと、維新後、零落して、孫は旧知の成島を頼ろうとしたが、祖母がそれをたしなめて、辻講釈で糊口をしのいでいたという。そして、成島の援助で、孫は後に一流の講釈師となった。
他に、金六町の蕎麦屋の2階で高橋お伝が後に愛人となる古着屋の吉蔵に借金を申し込んだなど、銀座に伝わる逸話を紹介。1937年に出版された本の復刊。(河出書房新社 1900円+税)