地球温暖化が進めば進むほど 儲かる人々がいるという現実
“地球温暖化を食い止めるには、各家庭が省エネを心がけ、電気もこまめに消しましょう”。我々一般庶民は、地球を守るためにと、このような刷り込みをされてきた。
一方、世界を見渡せば、温暖化がもっと進むことを望みつつ新たなビジネスを展開しようと試みる国や企業が存在する。マッケンジー・ファンク著、柴田裕之訳「地球を『売り物』にする人たち」(ダイヤモンド社 2000円+税)では、異常気象を一獲千金のチャンスと捉える人々の実態をルポしている。
例えば、低地国としても知られるオランダは、海抜以下の土地で人口の3分の2が暮らし、GDPの7割が生み出されている。そのため、世界一強大な護岸ネットワークを形成し、驚くべきエンジニアリング事業を展開してきた。
そんなオランダが、いまターゲットにしている市場が、マーシャル諸島をはじめとする“海に沈みつつある国”だ。地球温暖化によって水にのまれようとする国々に、堤防やダム、防潮堤、あるいは浮遊式の幹線道路など、最新の治水ビジネスを売り込もうとしている。さらに、世界の大都市は実に9割近くが水辺に位置している。オランダは、ニューヨーク、シンガポール、そして東京も次のターゲットに見据えているという。
地球温暖化でにわかに活気づいているのが、バイオテクノロジー業界だ。温暖化に負けない作物の遺伝子組み換え研究は世界各国で進んでいるが、次のターゲットが蚊である。デング熱やジカ熱など、温暖化の影響で蚊を介する病気が増えてきた。その対策として、イギリスのオキシテック社は遺伝子組み換えにより不妊の蚊を作り上げた。生物の遺伝子を操作することには賛否があるが、温暖化が加速する中でこの流れは止められないだろうと本書はいう。
温暖化による災害で利を得る保険ビジネスや、食糧危機に懸けるウォール街の農地買い占めなども紹介。“温暖化はカネになる”という現実を突きつけられる。