トランプ大放言 毒々しくずぶといユーモア感覚は侮れない
「人生は爆発だ!」ハート・シーリー著、前田和男訳
米共和党大統領候補に決まって一気に注目度の上がったドナルド・トランプ。おかげで毒々しい彼の放言集も続々登場している――。
トランプ放言集の特徴は、著者がトランプびいきかトランプ嫌いか、はっきり分かれていること。しかしアメリカのパロディー作家による本書は、あくまでヤジ馬的スタンスを貫く。
昨年5月の出馬表明のときは不法移民の多いヒスパニックへの敵対発言で世間を騒がせたのに、3カ月後には遊説先で「私はメキシコが好きだ。メキシコ人も好きだ」と手のひらを返す。徹底したご都合主義と自画自賛が持ち味で、普通なら命取りになる失言でも支持率が下がらない。あげくに平然と「実は(これでも)ナイスなやつなんだけどな、私は」とやってのけるものだから、場内大爆笑というわけだ。
ポピュリズムとは大衆の不満や恨みの感情を養分にした政治的扇動で、代表がヒトラーだが、トランプの場合、この毒々しくもずぶといユーモア(?)感覚こそが余人に真似のできないポピュリズム能力となっているのだ。「私の美点は何か。そのひとつは、大金持ちであることだ」と言い放って反発されないというこの男。下品な成り上がりとさげすむと痛い目に遭うだろう。(ビジネス社 900円+税)