「掠奪されたメソポタミア」ローレンス・ロスフィールド著 山内和也監訳
2003年のイラク戦争は、バグダッドのイラク国立博物館からの略奪や、考古遺跡の盗掘という悲惨な被害をもたらした。米軍の兵士は文化財を守る訓練を受けていない上に、博物館の向かい側にあった橋が戦略的に重要な地点であったため、博物館の敷地内に米軍の指揮所が設けられて、博物館は激しい集中攻撃を浴びた。
戦闘が終わると、人々が残っていた警備員の抵抗をものともせず、略奪を行った。遺跡も、かつて発掘を手伝って目利きになった男によって盗掘された。現在、オークションに出品された収蔵品を予算不足で買い戻せない状況だという。守れなかった文化遺産をめぐるノンフィクション。(NHK出版 4000円+税)