当時の少年少女は高齢者に 伝説の「ウルトラQ」が50周年
「『ウルトラQ』の誕生」白石雅彦著
日本のテレビ放送開始は1953(昭和28)年。受信契約数はわずか1485世帯だが、翌年には10倍以上の1万6779世帯に急上昇。「電気紙芝居」と見下していた映画界も急速に危機感を募らせることになった。本書はこんな前史から「ウルトラQ」の歴史をたどるドキュメント。
東宝で大監督の座を占める円谷英二に対し、息子の円谷一はTBSの演出部に属し、単発のドラマづくりで天才脚本家・金城哲夫らを育てた。このころ東宝はゴジラシリーズ3作目「キングコング対ゴジラ」で大ヒットを飛ばしたが、ライバルはテレビ出身のクレージーキャッツ主演の「ニッポン無責任時代」で、映画斜陽の象徴的な構図だったという。
本書は戦後娯楽史の大きな流れを見渡しながら「ウルトラQ」を論じる。つまり単なるファンブックというより、「ウルトラQ」を通して見た日本テレビ産業史なのだ。著者は「平成ゴジラ」シリーズの操演スタッフに加わったこともある脚本家。(双葉社 1700円+税)