「マシュマロ・ナイン」横関大著
高校野球小説である。ただし、かなり異色だ。なにしろナインの体重が全員100キロをオーバーしているのだ。中には130キロ、160キロというつわものまでいたりする。しかも全員が野球に素人。どうしてこんなチームが存在するのかというと、私立新栄館高校の校長が野球部を創設して甲子園をめざす、と突然宣言したからである。折よく(というのかね、こういう場合)、相撲部が不祥事を起こして活動休止中なので、相撲部員をそのまま野球部員として活動させればいい、というのが校長のアイデアだ。
その野球部をまかされたのが元プロ野球選手で体育講師の小尾。甲子園に行けなければクビだというので引き受けたが、唖然呆然の日々が始まっていく。ハンバーガー4つを食べた直後に「最近食欲がないんだ」というやつもいれば、5人前のラーメンを30分以内に食べれば無料になるという駅前のジャンボラーメンを全員が平気で完食したりする。
このように食欲の塊であるので、小尾が油断していると練習の休憩時間に空揚げ弁当を食べたりするのだ。もちろん、守れない走れないの二重苦で、どうしようもない。そこで考えたのが、ビッグ・ベースボール。打たれてもかまわない、エラーしてもかまわない。点を取られたら、それ以上の点を取ればいいのだ。というわけで、ぽっちゃり系の高校男子たちの壮大な夏が始まっていく。痛快な高校野球小説の誕生だ。
(KADOKAWA 1600円+税)