60種類以上の「バカ」メッタ斬りにドキリ
「バカざんまい」中川淳一郎著(新潮社 760円+税)
初回は「バカ」の話から。世の中には「バカ」があふれています。身近なバカからメディアを騒がせているバカまで、その種類はさまざま。私たちは日々、バカにイライラさせられたり実害を被ったりしています。
著者の中川淳一郎は、小学館が運営するwebサイト「NEWSポストセブン」などを長く手がけているネットニュース編集者。2009年に出版した「ウェブはバカと暇人のもの」で、ウェブとバカの密接な関係を明らかにしました。以来、大好きなビールをあおりつつ、バカのバカっぷりを容赦なく浮き彫りにする「バカ評論家」としても大活躍しています。
この本でも、バカを斬りまくる中川の包丁さばきは、遠慮も容赦もありません。〈「世間をお騒がせして」と謝るバカ〉〈グルメサイトを信じるバカ〉〈店員にいばるバカ〉〈「日本すげ!!」が大好きなバカ〉などなど、取り上げられているバカは60種類以上。何がどうバカなのかを明らかにしつつ、ちぎっては投げちぎっては投げしてくれていて、極めて爽快です。
この本が怖いのは、バカを笑うだけでなく、自分も当てはまりそうなバカも登場してくるところ。〈「ケースバイケース」というバカ〉では、何かを尋ねられたときに「人による」や「ケースバイケース」と答える無意味さや、使うヤツのバカさについて語っています。深く納得させられる内容なのですが、もしかして自分も使っているかも……。ほかにも〈スマホに時間を盗まれるバカ〉など、該当する項目がいくつもあります。
そう、バカは人ごとではありません。誰もがバカであり、自分と違う考えや常識を持った相手を「バカ」呼ばわりして、安心している節もあります。バカの斬られっぷりに留飲を下げつつ、我が身を振り返って、自分の中にひそんでいるバカに気づくことができる。そんなお得な一冊です。