「平穏死という生き方」石飛幸三著
特別養護老人ホーム「芦花ホーム」常勤医として、これまで数多くのお年寄りをみとってきた著者は、かねて「終末期の高齢者に胃ろうなどの過剰な延命医療を施すことは本人を苦しめる」と提言。もっと自然で安らかな死である「平穏死」を迎えさせてやるべきだとして、終末期医療と介護のあり方について一石を投じ続けてきた。
しかし、日本の終末期医療の現状は、いまだに胃ろうによる人工的な栄養摂取で生かされているケースが多く、認知症高齢患者の8割が「平穏死」できないという。人間は口で食べ物を味わって食べる機能を取り上げられると根源的な喜びを奪われたも同然で、生きる意欲が失われる。胃ろうによって“生けるしかばね”になってしまうのだ。
著者は、さらなる超高齢化社会が到来することが確実な今こそ、あらためて自分自身の「死」について真剣に考え、「後悔のない生」を生き始めるべきだという。これまで著者がみとってきた数多くの高齢者たちの死に方、生き方を通して、幸せな生涯の閉じ方が見えてくる。(幻冬舎 1100円+税)