修羅場をくぐって身に付けた「謝罪」のノウハウ
「よい謝罪」竹中功著 日経BP社 1400円+税
謝罪がちゃんとできるかどうかは、大人としての評価を左右します。個人にせよ会社にせよ、謝罪の仕方を間違えて、話がこじれたり騒ぎが大きくなったりするケースは少なくありません。
著者の竹中功は、よしもとクリエイティブ・エージェンシー(旧・吉本興業)の元専務取締役。入社後、宣伝広報室に所属し、のちには役員として、タレントが不祥事を起こすたびに、謝罪会見を仕切るなどして頭を下げ続けてきました。
世間の注目を激しく浴びまくっている状況で、スピーディーかつ的確に「謝罪」の方針やプランを練る緊張感はいかばかりか。修羅場を山ほど乗り越えてきた竹中は、いわば日本一の「謝罪のプロ」と言えるでしょう。この本では、彼が経験した事例を挙げつつ、謝罪とは何かということから平時の準備まで、具体的なノウハウがぎっしり詰まっています。
たとえば2008年に起きた、所属芸人が経営する焼き肉店での食中毒事件。「よい謝罪」が実現できた例として、どんな言葉で、どういう順番で謝罪することにしたかなど、じつに詳しく紹介されています。打ち合わせ中には、当事者の芸人がメモも取らずに携帯電話に出てばかりいて、叱りつけた一幕もあったとか。随所に出てくるその手の裏話が、かたくなりがちな話の格好のスパイスになっています。
謝罪会見の開き方やその後のニュースリリースの出し方など、リアルな本音をぶっちゃけながら、ここまで手取り足取り書いてくれている本は、たぶんほかにはありません。経営者や広報担当者には、イザというときの心強いお守りになってくれるでしょう。
もちろん個人だって、いつどんなことで謝罪が必要な状況になるか分かりません。サブタイトルにあるように、この本で「仕事の危機を乗り切るための謝る技術」を会得して、ピンチに強い大人になりましょう。