「ノスタルジー1972」中島京子 早見和真 朝倉かすみ 堂場瞬一 重松清 皆川博子著

公開日: 更新日:

 グアム島で横井庄一発見、札幌オリンピック、連合赤軍あさま山荘事件、外務省機密漏洩事件、沖縄返還、日中国交回復、カンカン・ランラン来日……思えば、これらの事件・出来事が起きた1972年は、日本にとって大きな節目の年だった。この1972年をテーマに6人の作家が競作する。

 幕開けは中島京子のモハメド・アリの来日と川端康成の自殺を織り込んだ母の失踪の物語。続く早見和真は、孫の安保法制反対運動と祖母の沖縄返還反対運動を二重写しにする。朝倉かすみは札幌オリンピックの日の丸飛行隊の活躍を応援する家族だんらんを見ながら疎外感を味わう少女の心情を描く。恋人の婦人警官から得たネタでスクープを書くべきか葛藤する新聞記者を描く堂場瞬一。残留日本兵のニュースで戦争で失った息子の思い出を蘇らせる祖母とパンダを見たがる孫の切ない思いをつづる重松清。トリを飾るのは、自らのデビュー時とアートシアターの清水邦夫の演劇を重ねていく皆川博子。滋味あふれるぜいたくなアンソロジー。(講談社 1500円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭