「使ってみたい武士の日本語」野火迅著
池波正太郎や藤沢周平らの時代小説をテキストに、侍言葉を解説した日本語面白本。
例えば「お流れちょうだい」。この一言とともに相手の杯を借りて酒を飲むのは「相手の精神や肉体にまとわれる貴重な何かを授かろう」という一種の儀式だと解説する。杯に残ったしずくには、清めの働きがあるとも考えられていたようだ。その他、腰に帯びた太刀の鍔元を握ったまま親指で鍔を押して刃を緩め、いつでも抜ける構えをとる動作「鯉口を切る」、無念を示すための切腹「無念腹」、新婚夫婦の初夜や男女の初めての性交渉を表す「新枕(にいまくら)」など硬軟206語を網羅。言葉から武家文化に迫る歴史時代小説ファン必携の書。
(朝日新聞出版 660円+税)