「阿蘭陀西鶴」朝井まかて著
5年前の延宝3(1675)年、おあいが9歳のとき、風邪をこじらせ母が死んだ。幼い弟2人は養子に出され、おあいだけが放蕩者の父と暮らしている。盲目のおあいには養子の口がなかったのだ。だが、おあいは幼いときから母にしつけられ、料理も裁縫も一人前にこなせる。おあいの父は、井原西鶴なる号で世に知られた俳諧師だった。おあいは、何日も家に帰らず、帰るときは取り巻き連中を引き連れてくる父が疎ましくてならない。一人で多くの句を短時間で詠む「矢数俳諧」の興行で名を挙げ、人々からもてはやされる西鶴だが、おあいには、父が際物にしか見えない。
盲目の娘の視点から江戸の大作家を描いた時代小説。
(講談社 700円+税)