「結婚クライシス」山田昌弘氏
「問題は、男性が稼いで家族を養い、女性が家事をするという『古き家族像』にいまだにこだわる人が多いことですね。学生にもそうした考えが増えています。今の時代、結婚は恋愛の結果ではなく、経済生活にとって有利な相手とするもの。つまり恋愛は無駄な行為になってしまったのです」
古き家族像にこだわる人々に、著者からの提案はこう。
「高収入で、かつ好みに難がない男性などいません。同様に家事ができて何でも言うことを聞いてくれる女性も存在しません。親に対しても同様。安定した職で高収入の婿はいないし、昔ながらのいい嫁もいません。この現実を頭に入れてほしいです」
ただし、個人の意識が変わっても、社会全体が変わらなければ意味がないとも指摘する。雇用の安定、所得格差の是正、社会保障制度の見直しと、結婚クライシスに立ちはだかる壁は相当高い。
「親としては、実家暮らしの子供は追い出して、自立させることがベストですが、低収入で成り立たず、可哀想という親心もあります。しかも全員が当たり前のように追い出さない限り、日本人はやろうとはしません。価値観が一変することが起こらない限り、日本社会全体は変わらないです。明治維新とか終戦とか、あとは応仁の乱レベルのことが起こらない限りね(笑い)。結局、社会学者である私の提案は、全部が変わらなきゃいけないってことなんですよ」(東京書籍 1400円+税)