「住友銀行暗黒史」有森隆著
闇はどこまで深いのか――。1990年代前半に起きたイトマン事件。住友銀行(現三井住友銀行)や暴力団などが複雑に絡み合い、6000億円もの巨額マネーが闇の勢力に吸い取られていった。怪文書の類いも乱れ飛んだ。
昨年、この出来事に直接関与した住友銀行元取締役の國重惇史氏が「住友銀行秘史」(講談社)を著し、内部告発状(怪文書)を出した本人であると告白した。当事者の語る中身は迫力に満ちているが、一方で、「真相を知るためには、抜け落ちている部分がある」という指摘も、ある程度、事件を知る人物からは聞かれた。
有森隆氏の新著「住友銀行暗黒史」(さくら舎)は、そうした不満に応えている。有森氏は、別名義で1991年に「住友銀行イトマン 権力者の背任――地下人脈に喰いちぎられたのはなぜか」(文芸春秋・ネスコ)を書き、この事件をライフワークとしてきた。それだけに、新著は集大成のような内容となっている。
序章「東西ヤクザの代理戦争」では、山口組若頭や稲川会2代目会長らが登場。のっけから事件の深い闇をえぐっていく。そして、磯田一郎住友銀行元会長、河村良彦イトマン元社長(住友銀行元常務)、伊藤寿永光イトマン元常務、闇社会のフィクサーといわれた許永中氏など事件の主役たちが、どんな思惑で、どう動いたかを克明に描いた。
イトマン事件から四半世紀。暗黒史の全貌がようやく明かされた。