「おばさん百科」小川有里著
世の男性の多くは、自分の妻がまさか「おばさん」になるとは知らず、結婚10年、20年と時を経て、その変化に今更ながら驚いているのではなかろうか。
でも、本人への抗議は厳禁。先方だって、こちらがこんな「おじさん」になるなんて知らなかったのだから。
ということで、本日ご紹介するのは、おばさんたちの生態を徹底的に暴いた痛快エッセー。
何度も同じことを娘に質問して脳の老化を疑われたという著者の友人。でも、お金に関することなど、自分が大事だと思うことは一度聞くとちゃんと覚えているという。
著者はそんな友人の話に、おばさんの脳には年齢を重ねることによって、話を聞いて大切なことしか取り込まない「自動選別機能」が備わるのではないかとひらめく。つまり、おばさんの脳は「老化」しているのではなく「進化」しているのだと話し、2人で納得し合う。
また、別の友人A子さんは、白髪染めも化粧もしないで自然派を自任。ある日、おしゃれで美しい友人から少しは「美容」に気を使った方がいいわよと助言され、普段は見ない鏡をよく見てみたら、口の周囲に生える黒い口ひげにびっくり。これからは口ひげだけは注意しようと心に誓ったという。
その他、同居して30年の姑と嫁・エイコさんの口ゲンカの顛末、地域の懇親会で垣間見たおばさんたちの芸達者ぶり、自分では「もうおばさん」とか「もうおばあさん」とか言うくせに、他人からそう呼ばれるのは許せないという心の内まで。
親の介護や夫の世話に骨身を惜しまず明け暮れる、バイタリティーあふれる女性たちのリアルな本音と生態をつづる。「おばさん」の心の中が理解できる、夫婦円満のための格好の参考書。(毎日新聞出版 1300円+税)