「源氏姉妹」酒井順子氏
著者は光源氏を性依存症と評するが、その博愛精神は認めている。彼の相手は、若い娘や美女ばかりではない。誰からも忘れ去られているような女性にも、「僕がしてあげなくては誰がする」とばかりにヤリまくっているのだ。
「美しさも盛りの源氏18、19歳の頃には、物語における唯一無二の“エロババア”として異彩を放つ源典侍と関係を持っています。そのとき彼女は57、58歳。AVにおける熟女ものでもない限り、そうは見ない関係です。また、鼻が象並みに長く異様に座高が高いというブスキャラの末摘花には、“捨て置くのは可哀想”と着物の世話までも焼くのです。高貴な人・光源氏は、福祉の精神で醜女や年配者にも“性と精”を分配した。地位と名誉と金を手に入れた現代の男性たちにも、ぜひ見習って欲しいですね(笑い)」
本作では、“姉妹”だけでなく“兄弟”の関係も描かれている。つまり源氏姉妹たちも、源氏とだけ関係していたわけではないのだ。この後やってくる武士の時代とは違い、男女ともに性を楽しんでいた平安時代は、1000年の時を超えた現代とも共通しているようだ。ぜひ、源氏物語の原文も読んでみたくなる。(新潮社 1500円+税)