「進行がんは『免疫』で治す」角田卓也著
がんは不治の病ではなくなりつつあるが、進行がんとなると抗がん剤しか打つ手がなくなり、克服が難しくなる。しかし今、最先端のがん免疫療法が、がん完治への道を開きつつあるという。その鍵を握るのが、「免疫チェックポイント阻害剤」だ。
CTL(細胞傷害性T細胞)と呼ばれる免疫細胞は、がん細胞に対してスナイパーのように直接攻撃を仕掛ける頼もしい存在だ。しかし、活性化し過ぎると必要以上に体を痛めつけるため、ブレーキ役として働く分子も備わっている。増殖したがん細胞はこの仕組みを悪用し、CTLの働きにブレーキをかけることができる。そのため、なかなか免疫力を発揮することができないのだという。
これまでの免疫療法では、免疫力強化、つまりアクセルを踏む力を強めることばかりに注力してきた。しかし今、この発想を変えてブレーキを解除する「免疫抑制解除療法」が誕生している。そのために用いられるのが「免疫チェックポイント阻害剤」であり、世界各国で研究が進み、日本国内でもすでに2種類が承認されている。
現在、免疫チェックポイント阻害剤による奏効率(がん細胞が縮小もしくは消滅した割合)は20~30%。一見低いようだが、これは早期がんを含めない、末期がんのみを対象としたデータであり、大きな希望と言えるだろう。(幻冬舎 1300円+税)