主人公はロックバンドの美人ギタリスト
「疾風ガール」誉田哲也著 光文社文庫 648円+税
【話題】ギブソンが選んだ「最高の女性ギタリストTOP10」には、ランナウェイズのジョーン・ジェットとリタ・フォード、オリアンティ、ハートのナンシー・ウィルソンら、ロック畑の女性ギタリストの名前が入っている。いずれも容姿、技量ともに優れたカッコいいギタリストだが、本書の主人公も、彼女らに引けを取らない魅力の持ち主。
【あらすじ】柏木夏美はロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリストで19歳。ギブソンの赤いレスポール・ジュニア、ダブルカッタウェイ・モデルから放たれる音は破格で、そのルックスとともに、引きつけられずにはいられない天才ギタリストだ。
26歳でバンド活動に見切りをつけて芸能事務所に就職した宮原祐司は、3年経ってもこれといった実績を残せず、唯一自分でスカウトした女性タレントは思うように売れず、クビに。その祐司の目に留まったのが夏美だった。
彼女の抜きんでた才能に惚れ込んだ祐司は、夏美に独立を持ちかけるが、同じバンドのボーカル、城戸薫を敬愛する夏美にバンドをやめるつもりはない。それでも諦めずに通い続け、ようやく夏美の心が傾きかけた矢先、薫が自殺してしまう。しかも薫は偽名だったことが分かる。薫はなぜ自殺したのか、そして彼の真実の顔は? 夏美は祐司を誘って、その謎を追う旅に出かけていく――。
【読みどころ】物語の前半は、冴えないダメ人間の祐司と自由奔放で真っすぐな夏美との軽妙な掛け合いで、ロックバンドの日常が描かれていく。後半は、「ストロベリーナイト」をはじめとする姫川玲子シリーズの作者らしく、ミステリーの風味が加わる。夏美に魅了された人は、続編の「ガール・ミーツ・ガール」も。
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