赤坂ひかるの父は札幌でボクシングジムを経営していた。北海道からチャンピオンが出たことはないから自分が育てるのだと言っていた父が、脳梗塞で倒れた。母に「ジムの留守番をやってみない?」と言われ、早起きが苦手だったひかるはこれ幸いと会社を辞める。
初めは練習を見ていた彼女はトレーナーを目指す。父の弟子がジムを辞め、指導者がひかるひとりになったころ、無口な高校生、ハタケがジムにやってきた。ハタケはドスッ、ドスッと、一心にサンドバッグを叩いている。なぜか目新しい光景を見た気がした。
日本ライトフライ級チャンピオン、畠山昌人を育てた女性トレーナーを描くノンフィクション。
(文藝春秋 1750円+税)