民主主義だから読書が真価を発揮する
「正しい本の読み方」橋爪大三郎著/講談社現代新書2017年9月
読書の必要性について、理論と実践の両面から考察した良書だ。橋爪大三郎氏は、教養を付けるためには読書が効果的と考えている。
<教養こそは、組織のトップのような、意思決定をする立場になるとよくわかりますが、前例のない出来事が起こったときに、ものごとを決めるのに唯一、参考になるものです。なぜか。前例がないようにみえても、多少似たようなことなら、外国にあったり、過去にあったり、フィクションの中にあったりするからです。>
読書を通じて代理経験を蓄積することが、生活と仕事で決断を迫られたときにとても役に立つ。評者の過去の経験に照らしてもこの記述は正しい。
橋爪氏は、民主主義社会においてこそ読書が真価を発揮すると考える。
<まず、民主主義ならすべてうまくいく、と思わないほうがいい。民主主義のよいところは、独裁でないという点だけです。決定の質が、独裁よりましなわけではない。でもそれが、自分の下した決定だからと、結果を引き受けることができるのです。/独裁国家だったら、不条理な世界を生きている感覚に苦しめられる。どんな悪い結果もみんな独裁者のせいにし、恨みながら一生を送ることになるでしょう。民主主義なら、どんな悪い結果も、自分のせいです。その責任をとりながら、誇りある一生を送ることができる。/これは大きな違いです。自分の考えや行動と、世界とがつながっているという感覚をもつことができるから。>