「祝葬」久坂部羊著
医師の手島崇が、大学時代の親友・土岐佑介の葬儀のため信州に向かうところから物語は始まる。
37歳という若さでの突然の訃報を聞き、手島は生前に佑介から聞いた土岐一族の話を思い出す。佑介の父・冬司は、49歳で胃がんで死に、祖父の伊織は52歳の時に奥穂高で滑落死をし、曽祖父の騏一郎は55歳で肝硬変で亡くなり、大叔父の長門は50歳で入浴中に溺死、長門の息子の覚馬は、52歳で肺がんで亡くなっていた。
全員医師ながら短命で、佑介は土岐家には早死にのDNAがあると語っていたのだ。
自宅のソファで亡くなっていた佑介の死は事件性のない病死として処理されたが、実は佑介の死にも土岐一族の死にも、全く別の真相が隠されていた……。
現代医療の問題点に焦点を当てた小説に定評がある著者による最新作。本作でも、人が医療に求めるものの矛盾や医師の葛藤、長生きすることによって新たに生じる困惑など、長寿の時代の問題をリアルに描いている。
(講談社 1600円+税)