「ほろ酔い天国」青木正児ほか著
収録された池波正太郎のエッセー「酒」の結びは、日本酒好きな猫の話だ。
「私の飼っているシャム猫は清酒が大好きだ。深夜。のこのこと書斎に入って来て、ひとりで机に向かっている私のひざへ乗り、しきりに鼻を鳴らす。酒がほしいのだ。私の書斎には、私ひとりで酒の支度ができるようになっている。いまも、私のひざで鼻を鳴らしている。小皿へ清酒をついで、彼女がピチャピチャとたのしむところをながめることにしよう」
明治以降、現代に至るまで、坂口安吾、田中小実昌、筒井康隆、平松洋子、吉田健一ら著名作家41人の酒にまつわるエッセーアンソロジー。
読むと、その人となりとともに、酒に対する執着、怨念(?)など、もろもろが浮かび上がり、至福の「ほろ酔い」が味わえる。
(河出書房新社 1600円+税)