「暴走する能力主義」中村高康著
学習指導要領改定や入試改革、教育システムが「これまでとは異なる新しい時代に対応した能力」を育成しようとしているように見えるが、実は現状制度の何がいけないのかよく分からないままに、変えることだけが先に決まっているようだ、と著者は批判する。
コミュニケーション能力や協調性、問題解決力などの「新しい能力」といわれるものは、これまでも求められていた陳腐な能力であって、新しい時代になったから初めて必要、ないし重要になった能力などではないと断言。その上で、いま人々が渇望しているのは「新しい能力を求めなければならない」という議論それ自体だとし、なぜそのような渇望が生まれるのかを分析しながら現代社会を論じたテキスト。
(筑摩書房 820円+税)