「燃える波」村山由佳著

公開日: 更新日:

 三崎帆奈美は、衣食住全般を心地よくコーディネートするライフスタイリスト。ファッション誌などのスタイリングの他、女性誌にエッセーを書いたり、ラジオのパーソナリティーを務めるなどマルチに活躍している。しかし42歳という、女であることにしがみつくばかりでは痛いけれど、女を捨ててしまいたくもない微妙な年齢だ。10年連れ添ってきた夫とも最近溝が深まっている。そんな折に出会ったカメラマンの澤田は、偶然にも中学の同級生だった。気弱な少年からたくましい男に変貌した澤田に、心を動かされる帆奈美。その淡い心をたき付けるかのように、夫が浮気相手を妊娠させたことが発覚する。

 身の置きどころのなくなった帆奈美は、取材で澤田と一緒にヨーロッパに行くことに。澤田を身近に感じながらも、裏切りと恋情という相反する感情に揺れる帆奈美は、ある決意をする……。

「ダブル・ファンタジー」以降、大胆な恋愛描写で男女の間の深淵を鋭く突いてきた著者が、結婚という桎梏から抜け出す女性の鮮やかな軌跡を描いた問題作。

 (中央公論新社 1600円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…