「絶対に出る世界の幽霊屋敷」ロバート・グレンビル著、片山美佳子訳
お化け屋敷といえば夏の遊園地の風物詩だが、こちらはどうやら本物。世にも恐ろしい世界各地の心霊スポットを巡る写真集だ。
ヨーロッパの各地に点在する中世の古城は、時に戦闘が繰り広げられ、またある時は牢獄と化し拷問や処刑が行われてきた歴史の積み重ねの故か、出没する幽霊の噂がつきまとう。
そのひとつ、フランス・アンジェの「ブリサック城」は、陽光の下で眺めると壮麗で明るい雰囲気の外観に反し、「緑の貴婦人」と呼ばれる幽霊が出ることで知られる。15世紀、妻のシャルロットと愛人の密会に激怒した主のジャックが2人を殺害。以来、お気に入りの緑のドレスに身を包んだシャルロットの幽霊が城のあちらこちらに出没するという。
スコットランドとの境に近いイングランド・ノーサンバーランドの「チリンガム城」には、成仏できない霊が数多くさまよっているという。その一人で青く光る「ブルーボーイ」は、極秘文書を見てしまったがために壁の中に閉じ込められ、出られなくなった少年の幽霊だと信じられている。後の改修工事の際に、本当に子どもの骨が発見されたらしい。同城では、他にも夫が自分の実の妹と駆け落ちしたレディ・バクレーや、何百人ものスコットランド人を拷問の末に殺害し、自らは絞首台の上で八つ裂きにされたジョン・セージの幽霊が出るという。
死者が眠る墓地は、あの世に一番近い場所でもあり、心霊スポットとしての話題は尽きない。
アメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズ「セントルイス第1墓地」。ブードゥー教の女王と呼ばれたマリー・ラビューの墓を訪ねると、突然、具合が悪くなったり、見えない手で触られたりするという。
多くの人が行き交う公共施設やホテルも幽霊話や超常現象のエピソードに事欠かない場所である。
米国の修道士が1900年ころに建てたというフィリピン・バギオ市の「オールド・ディプロマット・ホテル」では、日本の憲兵によって多くのカトリックの神父や修道女が殺され、1945年には、日本軍がここに立てこもり最後の抵抗をした末に陥落した。現在は廃虚となったこのホテルには、命を落とした日本兵の魂がさまよっているという。
また、米国コロラド州エステートパークにある「スタンリーホテル」は、スティーブン・キングが小説「シャイニング」のインスピレーションを得たホテル。このホテルの217号室には、元従業員のエリザベス・ウィルソンの幽霊が出て、客の荷物をあけ、衣類を片付けてくれるという。
その他、病院や役所、個人の屋敷、宗教施設など89カ所のスポットに、その地にまつわる物語を添えて収録。真夏の寝苦しい夜の読書にぴったりの納涼本。
(日経ナショナル・ジオグラフィック社 2000円+税)