「医療現場の行動経済学」大竹文雄・平井啓編著
医者が患者に情報提供をして、どんな治療をするか意思決定する「インフォームドコンセント」という手法。がんの告知などが多く行われるなか、医療知識のない人が、ある日突然難しい意思決定をしなければならないケースが増えている。本書は、意思決定にどんなバイアスが存在するかを行動経済学の視点から解説し、意思決定の際の問題点について明らかにしている。
よく見られるのが、「ここまでやってきたのだから続けたい」と今までの治療法に固執するサンクコスト・バイアス、「まだ大丈夫」と病状の変化の認識を拒む現状維持バイアス、「今は決めたくない」と意思決定を引き延ばす現在バイアス、医学的に証明されている治療法よりも「がんが消えた」などの広告の文言を意思決定の参考にしてしまう利用可能性ヒューリスティックの4つ。
患者だけでなく医師側にもこうしたバイアスが存在することを意識した上で、意思決定することの大切さを説いている。
(東洋経済新報社 2400円+税)