「にっぽん氷の図鑑Best50」原田泉著
この記録的な酷暑で、かき氷屋さんも大繁盛。ここ数年のブームで、いまや専門店が各地に登場し、通年で楽しめる。かき氷といえば「イチゴ」や「メロン」などしか思い浮かばない人には、人気店の凝ったメニューに目が点となるに違いない。
なんでも、かき氷をこよなく愛する人々を「ゴーラー」と呼ぶそうだが、本書は、そのゴーラーたちに愛される全国各地の選りすぐりのかき氷店と、オリジナル名物メニューを紹介してくれる図鑑。
ゴーラーたちに聖地と呼ばれるのは、先日、史上最高気温を記録した埼玉・熊谷にある「慈げん」。多くのゴーラーが、この店にハマったきっかけとなったというのが、ミルクベースの氷にココアをふりかけた「ミルクココア」という逸品。いたってシンプルなレシピなのだが、それぞれの味が溶け合い、口の中で「ミルクココア」が完成するという至高の味なのだとか。著者は、同店の「黒みつ きなこクリーム」を「かき氷の到達点」だと絶賛する。
そうしたメニューは、店主が愚直なまでにこだわった素材と、全神経を集中させて削った氷との融合から生まれる。
東京・渋谷「セバスチャン」の「イチゴのクレームブリュレ」や、同じく吉祥寺「氷屋ぴぃす」の「炙り芋チーズとカスタード」などは、一見すると温かい料理のよう。また、ふわふわの氷の山の半分が絶壁と化した東京・目白の「志むら」や、氷の高さ63センチという宮崎「百姓うどん」など、昔ながらの円錐のイメージからは想像もできない多彩なメニューを提供する50店を網羅。
中には、地元のお祭りやイベントのときだけ限定でかき氷を出す山形の老舗和菓子店のように、店に出向いても口にできないものもある。今夏、あなたも至高のかき氷を求めてゴーラーデビュー!? (ぴあ 780円+税)