「凡人の怪談」工藤美代子著
子供の頃、お手伝いの小春さんがこんな話をした。田舎の家にいた頃、オバサンが夜中に寝言で「そこのお財布取ってよ」と言うので、小春さんの母が「どこにあるの?」と聞くと「箪笥の2番目の引き出しの中」と言うが、財布はない。今度は「台所」と言う。そんなことを繰り返して、母は怒って寝てしまった。翌朝、オバサンは死んでいた。占いのお婆さんは、はっきり寝言を言う人はあの世に行きかけているから、返事をしてはいけないと言う。
著者は明け方の5時ごろ寝言で「こら、さっさと起きろ、朝だぞ」と叫ぶので、夫が「うるさい、黙れ」と怒鳴るが、あの世に連れていかれてはいない。(「寝言に返事はいりません」)
身近で起きた怖い話46話。
(中央公論新社 1300円+税)