「大店の暖簾下り酒一番」千野隆司著
霊岸島の下り酒問屋の大店・武蔵屋は、新酒「灘桜」の独占販売権を獲得。4月1日を売り出し日と定め、事前に役者を呼んで集まった人々に酒を振る舞う試飲会を催し、手代の卯吉らは対応に追われる。
卯吉は武蔵屋の先代主人の子供だったが、妾腹のため、先代亡き後、後を継いだ長男の市郎兵衛と義母のお丹らに冷遇されてきた。灘桜の売り出し日が刻々と近づくが、荷を積んだ船が、なかなか江戸に到着しない。お丹は、心配する得意先に期限に間に合わなかったら半値で卸すと告げていると知り、卯吉は店の経営に不安を抱く。やがて泥舟から逃げるように手代仲間らも店を去っていく。
傾きかけた酒問屋の立て直しに奔走する卯吉を主人公にした時代小説シリーズ第1弾。
(講談社 640円+税)