「日本百銘菓」中尾隆之著
夏休みも終わり、職場では各人が旅先や故郷から持ち帰ったお土産が行き交っているのではなかろうか。
各地に、その場に行かなければ買うことができない銘菓がある。
本書は、これまでに5000種近くを食べたという旅行作家が厳選した100銘菓を紹介するカラーガイド。
まずは、読者に一生に一度は食べてほしいという絶品菓子15品が並ぶ。そのひとつ、「名菓舌鼓」(山口県山口市・山陰堂)は、求肥で手亡豆の白餡を包んで俵形に整えたもので、皮と餡の区別がつかないほど食感と甘さが溶け合うという餅菓子。
江戸時代初期から続く京都の老舗・亀屋清永の「清浄歓喜団」は、菓名も形も異色の逸品。奈良時代の遣唐使がもたらした唐菓子のひとつで、米粉と小麦粉の生地でこし餡を巾着形に包み、口を八葉のレンゲに見立てて結び、ごま油で揚げてある。法会の際に歓喜天に供える菓子で、密教寺院では欠かせないものらしい。
そのほか、年に6回だけ販売されるという「小城の朔羊羹」(佐賀県小城市・村岡総本舗)など、甘党なら写真を見ているだけで、そわそわとしてくるに違いない。
さらに、饅頭や最中、煎餅など、土産銘菓にふさわしい伝統菓子それぞれの原点ともいえる逸品や、松江藩7代藩主・松平治郷が好んだといわれる「若草」(島根県松江市・彩雲堂)といった「歴史・風土が生きる伝統銘菓」などをジャンルごとに紹介。
中には、城主だった田沼意次の汚名を払拭し、町おこしにつなげようと作られた小判をかたどった「ワイロ最中」(静岡県牧之原市・桃林堂)などの「唯一無二のユニーク銘菓」もある。
見たことも聞いたこともない銘菓が多数あり、出張や旅行の際のガイドブックとして必携になるに違いない。
(NHK出版 1000円+税)