「世界遺産 100断面図鑑」中川武監修
「人類が過去から未来へ伝えていかなければならない共通の遺産」として認定された世界遺産は、今や世界中に1000件以上もあり、どの遺産も各地の観光の目玉として世界中から訪問客が絶えない。
本書は数ある世界遺産の中から精選した遺産を断面図で紹介。内部や成り立ちを通して、その魅力に迫るイラスト図鑑。
フランスの「ノートルダム大聖堂」(1991年、以下登録年)や、イタリアの「パンテオン」(1980年)、スペインの「サグラダ・ファミリア」(1984年)など、お馴染みの遺産が勢ぞろい。
そのひとつ、オランダ北西部エルスハウトの「風車群」(1997年)は、海抜0メートル以下の低地にある国土の排水問題を解決するために1700年代に建設されたもの。風車によって水を低所から高所にくみ上げる仕組みや、製粉用として利用されたときの内部の構造などが、断面図だとよく分かる。
さらに、風車を利用していないときの羽根は遠隔地への伝言板の役割を果たし、羽根が止まっている位置によって祝いごとや不幸があることを伝えたとか、風車を常に風上に向けるため、風車の上部は旋回する機構を持っていたなどの豆知識も満載。
ユカタン半島の付け根に位置するベリーズのカリブ海のサンゴ礁にぽっかりと開いた神秘的な大穴「グレート・ブルー・ホール」(1996年)や、紀元前4000年ごろからすでに人が住んでいたというトルコ「カッパドキア」(1985年)の地下都市なども、断面ならではこそ、その不思議な構造がよく分かる。
来年申請が予定されている「仁徳天皇陵」も合わせて日本の世界遺産もほとんどを網羅。
ページを開けば、時空を超えて、世界遺産の旅に出かけられる。
(宝島社 1500円+税)