「蜜蜂」マヤ・ルンデ著、池田真紀子訳
2098年の中国四川省。幼い息子を愛する母親のタオには、果樹園で人工授粉をする仕事を課されていた。そこは、環境破壊の影響で蜜蜂が姿を消した世界。蜜蜂に代わって奴隷のように働く労働者が、列をなして果樹園に通い、樹木に登って花粉をつけていた。
タオは、息子に人工授粉の労働以外の人生を歩ませることができないかと1日1時間しかない一緒に過ごせる時間に教育を与えようとする。そんなある日、珍しく休みが与えられたタオはピクニックに出かけ、そこで悲劇に見舞われる……。
本書は、2017年ドイツで総合1位のベストセラーとなり、33カ国以上で刊行された話題の書。
タオの物語を起点に、1852年のイングランドで蜜蜂を研究するウィリアムと、2007年のアメリカで養蜂業を営むジョージの物語が交錯しながら、それぞれの家族の運命をたどっていく。それぞれ親子の物語でありながら、生態系に与える人の影響について深く考えさせられる。
(NHK出版 2000円+税)