「大ぼら吹きの城」矢野隆著
藤吉郎は、清洲城主・織田信長の小者頭で、身分は低いものの大きな野心を抱いていた。そんな藤吉郎が美しい娘に一目惚れする。娘は織田家弓衆の浅野又右衛門の養女・於禰。身分違いもなんのその、藤吉郎は「儂は天下人になる男じゃ」と大ぼらを吹き、嫁になってくれと迫る。
最初は相手にしなかった於禰だが、藤吉郎のしつこさに負け、2人は夫婦に。この結婚を機に、藤吉郎の運は開けていく。
手始めに、かつて縁のあった木曽川流域に根を張る川筋衆を束ねる蜂須賀小六を味方に引き入れ、その褒賞として鉄砲足軽の組頭に。次いで美濃攻めの要衝、墨俣城築城を買って出る。築城は敵方の妨害に遭って何度も頓挫していたが、藤吉郎は自分なら短時日で城を築いてみせると大言壮語。皆がほら吹きめとバカにする中、藤吉郎は蜂須賀小六ら川筋衆の力を借りてこの難題に挑む……。
世にいう「墨俣一夜城」の伝承を中心に、舌先三寸で乱世を生き抜く若き秀吉の姿を清新に描いた長編歴史小説。
(KADOKAWA 1600円+税)