「酒と人生の一人作法」太田和彦著
北海道はかつては米の生産に不適だったので日本酒造りの歴史は浅いが、ビールはうまい。料理は炉端焼きが多くて、魚も野菜も囲炉裏で焼いて食べる。寒い外から来た客は燗のつくのを待てないから、鉄瓶や瓶で温めてある酒をすぐ出す。冷たい生魚の刺し身は食べたくないし、ビールに合わないから、魚は干物で、基本はホッケ、ニシンだ。赤々とした火がいちばんのもてなしなのは、開拓当時の記憶を伝えるDNAだと著者はいう。関東はマグロ、カツオが中心で、すぐ出る刺し身に慣れているから、東京者は料理が遅いといらいらする。だが、関西は酒より食べ物優先だから、「少々お時間かかります」と言われても悠然としている。(居酒屋と風土)
独酌を楽しむ人生エッセー。
(亜紀書房 1500円+税)