改憲との対決
「新装復刻版 みんなの憲法」日本評論社編
首相幼少の60年安保当時、祖父に対して「岸やめろ!」の大合唱が国民から湧き上がったことへのルサンチマン(恨みの念)がある、とはよく知られる話だ。本書はその後の61年、憲法擁護国民連合が編集した有名な本の新装復刻版だ。
表紙をめくると「憲法の成立」に始まって「憲法と家族」「憲法と生活」「憲法と労働」「憲法と婦人」などがずらり。執筆者は当時の主だった憲法学者らが並ぶ。50年も昔の本だが、驚くのは論点がいまとほとんど同じであること。
たとえば「憲法と平和」(寺沢一)では、保安隊を設置した吉田茂首相がいずれ「戦力に至れば憲法を改正する」と明言したのをうやむやにしたまま「自衛のための戦力は九条の禁じるところではない」という自民党長年の言い逃れができた経緯が紹介される。
しかしもともと戦争に負けたから戦力放棄したわけではない。幣原喜重郎首相も「積極的に軍備を全廃し、戦争を放棄してしまうのが(平和の)一番確実な方法」と明言していたのだ。
(日本評論社 1600円+税)
「憲法についていま私が考えること」日本ペンクラブ編
ペンクラブに所属する合計44人の作家、詩人、ジャーナリスト、エッセイストらが寄稿した“憲法私見集”。といっても堅い本ではない。切手ブームの起こった子ども時代、友達のマニア君が「交換しよう」と持ってきた「日本国憲法施行記念」切手のほほえましい思い出(出久根達郎)もあれば、「私は実は国家というものが苦手だ」と言い切る詩(谷川俊太郎)、「沖縄を見殺しにするな春怒濤」の俳句(金子兜太)、「喜劇流行性官房長官」と題された風刺戯曲(中村敦夫)まで実に多士済々。
その一見、野放図な自由さこそが、戦後の平和ニッポンがはぐくんできたものなのだ。
(KADOKAWA 1700円+税)
「憲法ドリル」中村くみ子編著
護憲派の人々は「憲法はすばらしい」と賛美するものの、あのわかりにくい文章は何とかならんか、と思う人も少なくないはず。センテンスは長たらしく、言い回しも不器用で、わざとわかりにくくしているのではないか……。そんな気にすらさせるほど。
そこで心ある弁護士たちが作成したのが本書。下段に憲法の原文を配し、上段に「ですます」の現代語訳を並べる。9条は「世界の平和を願い求めているわたしたちには、正しいといえる考えがあります。それは、ほかの国との間のもめ事を解決するために、武器の力でおどしたり武器を使ったりせず、戦争をしない、永久に放棄するということです」「それを実現するために、陸軍や海軍や空軍などの戦力は持ちません。国が戦争をすることは認めません」。なるほど、一点の曇りもなくわかるではないか!
(高文研 1200円+税)