中国とのつきあい方
「スッキリ中国論」田中信彦著
強権政治に爆買い旅行者、バブル崩壊の懸念など何かと難しいのが中国とのつきあい方だ。
同じような顔のアジア人で、同じように箸と漢字を使うのに、日本人にわかりにくいのが中国人。ビジネスの場でも、爆買い観光客としても接触が増えるにつれワケわからんという思いは募る。本書はそんな悩みに答える“街場の中国論”。
日本人は行動が計画的で原則重視の「スジ」論者。対する中国人は臨機応変で原則より目の前の利害に敏感。ゆえに自分に害がなければ割り込みにも寛容で、電車賃の貸し借りなどもいいかげん。細かな「スジ」にうるさい日本人は「イラッ」とくるケースが増えるわけだ。
著者は上海と東京を拠点に大手企業を顧客にするコンサルタント。奥さんが中国人で公私両面の中国通だから身近な話題からビジネスまで実例も豊富。日本ではいまいちの配車アプリサービスが中国で急拡大した背景の分析など凡百の文化論をしのぐ面白さだ。 (日経BP社 1500円+税)
「中国経済講義」梶谷懐著
中国の経済統計は信頼できるのか。不動産バブルは止められるのか。日中の経済関係は果たしてどうなるのか……。
これらの難問に答えるのが中国の財政金融学院への留学歴を持つ神戸大教授の著者だ。中国がいずれ米国をしのいで世界一の経済大国になるのはほぼ間違いない。しかしGDP統計は信頼性が低いともいわれる。
著者は諸説を紹介しながら事情を解説し、中国特有の「誤差」が生まれる理由を明らかにする。新書ながら程度を下げず正確な説明を心がける著者。中国ビジネスや対中投資などを考える読者は必読だろう。 (中央公論新社 880円+税)
「習近平のデジタル文化大革命」川島博之著
習体制下がネットを厳しく規制・監視していることは周知。街角の監視カメラを冗談半分にスマホで撮影しただけで警察の取り調べを受ける懸念がある。東大准教授の著者自身、当局に批判的な前著のせいで二度と訪中できない立場だという。
その中国では独裁政府が強権策でバブル崩壊を防いでいる。しかし、それでも中国バブルは崩壊すると著者は言う。理由は高齢化と格差社会。それゆえに中国当局はヒトラー以上に厳しく巧みなデジタル監視社会を築き上げる、とみるのである。 (講談社 840円+税)