「新冷戦」下の核の恐怖

公開日: 更新日:

「DARPA秘史」シャロン・ワインバーガー著、千葉敏生訳

 ARPANET(アーパネット)こと米「高等研究計画局ネットワーク」は、インターネットの起源といわれる。

 1957年、ソ連の人工衛星打ち上げにショックを受けたアイゼンハワー大統領の命令で国防総省につくられた組織だ。

 数年後に「国防高等研究計画局」と改称された組織の略称が本書の書名「DARPA(ダーパ)」。この研究所の草創期から現在までの活動を詳細に描いた通史で、著者は著名な国防・安保問題専門のジャーナリストだ。

 本書を読むと、大国アメリカの国防がいかに個人の思いつきや好みに左右されているか、ぞっとする思いで知ることになる。

 当初、宇宙開発計画だけを専管事項としていたダーパはベトナム戦争でゲリラ戦の研究センターになり、奇妙な心理戦の戦術や新兵器の開発に関わっていく。インターネットもそんなひとつとして実験され、やがて実用化されたのだ。 (光文社 3200円+税)

「核戦争の瀬戸際で」ウィリアム・J・ペリー著、松谷基和訳

 青年時代、米軍兵士として大戦直後の沖縄に派遣された著者。壮絶な破壊のさまを心に刻み、数学者として学位を得たあと防衛産業へ。

 60年代に始まったデジタル革命にも対応して実績を残し、米カーター政権で国防次官、クリントン政権では国防長官まで務めた。

 冷戦時代を前線で知り尽くしたこの人が「今日、核兵器による破壊の危険性は、冷戦時代よりも高くなっている」と直言。世界最大の核大国の指導的地位にあった人物が、核兵器の危険性削減の必要性を訴えている。 (東京堂出版 2500円+税)

「核は暴走する(上・下)」エリック・シュローサー著、布施由紀子訳

 3.11大震災のあとも「原発安全神話」に固執する政府と財界。しかし「核」を完璧に管理するのは実は不可能だ、ということが本書を読むとよくわかる。

 狂牛病問題の追及などで知られたジャーナリストの著者は米エネルギー省の機密資料を調べ、核兵器運用に関する「1000件以上の事故」があったことを突き止めた。

 冷戦中、米軍は輸送中の核弾頭8発を紛失し、うち1発はノースカロライナ州に落下したまま見つかっていないというのだ。保守点検のさなかに誤って落とした工具が核ミサイルの燃料タンクに穴を開けた「タイタンⅡ」事故の話などまさに背筋が凍る。 (河出書房新社 各3900円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭