「月夜彦」堀川アサコ著
都で、天子の妃をはじめ、高貴な佳人が殺される事件が相次ぐ。その亡きがらには大きな食い痕があった。市中には犯人の首を狙う、にわか賞金稼ぎがあふれる。
ある夜、散楽舞の小槌丸は酒場で賞金稼ぎに命を狙われるが、間一髪、現れた公卿に助けられる。公卿によると、100年前にも蜩公という殿上人が天子の御子を懐妊した女御に横恋慕して殺してしまった事件があったという。実は目の前の公卿こそ、狼神の使いとなった蜩公の化生だった。狼神への生け贄にされそうになった小槌丸だが、その胸に秘めたたくらみを果たすまで死ぬわけにはいかない。そう願った瞬間、「聞きとどけたり」という不気味な声が耳の奥に響く。
禍神が跋扈する王朝を舞台に描く長編ダークファンタジー。
(講談社 700円+税)