「東京の橋 100選+100」紅林章央著
東京には車が通れる橋だけで五千数百、歩道橋や鉄道橋を加えると7000を超える橋があるという。その中から厳選した100橋に、特色がある鉄道橋・歩道橋100橋を加えて紹介するガイドブックだ。
「千住大橋」は、統治地へのアクセスを重視した家康が、江戸入府直後の文禄3(1594)年に隅田川初の橋として架けたもの。現在の下り線に使用されている鋼鉄製ブレストリブ・タイドアーチ橋は、昭和2年に関東大震災の復興事業として架橋されたものだ。
東京の川を代表する隅田川には35橋が架けられ、ほかにもGHQの技術将校らをうならせたという「勝鬨橋」から、最新の「築地大橋」(2014年架橋 2018年暫定開通)まで、橋界のスターが勢ぞろいしている。
また、隅田川には多くの小河川が注いでいるが、それらの川の最も河口(隅田川寄り)に架かる橋の形はすべて異なっているそうだ。これは隅田川から橋を見ただけで、川の名前が分かるようにとの措置だったという。
中でも日本橋川に架かる「豊海橋」(1927年架橋)は、際立った特徴を持つ。はしごを横に倒したような「フィーレンデール」と呼ばれる構造で、当時欧米にもなかった最新の構造だったという。
その他、日本一の名橋「日本橋」(1911年)や、上空から見ると三つまたに分かれたY字形の「三吉橋」(1929年 中央区)、日本初の国産の鉄橋「弾正橋」(1878年 現在は江東区の公園に移設され人道橋「八幡橋」として現役活躍中)など。それぞれの橋の歴史や構造を設計者ら関わった人々の仕事に深い敬意をこめて、エピソード豊かに紹介する。
普段、利用している橋もよく見てみると、これほど魅力に満ちた世界であることに驚かされる。東京散歩のお供に最適。
(都政新報社 1800円+税)