「イラストでわかる映画の歴史」アダム・オールサッチ・ボードマン著 細谷由依子訳
DVDやオンデマンドなど、いまや気軽に映画を楽しめる時代となったが、初めて映画館で映画を見た時のわくわく、ドキドキした体験を覚えている方も多いことだろう。本書の著者が初めて映画館で見た映画は「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 特別篇」(1997年)だったそうだ。その日は、誕生日だったので映写室に招き入れられ、「映画を息づかせる」巨大な映写機とも対面。その日から映画に魅了され続けているという氏が、壮大な映画の歴史をたどりながら、映画人たちのたゆまぬ挑戦と情熱を伝えるイラスト・ブック。
絵で物語を伝えるという目的で光が使われたのは、東アジアに今も残る「影絵」が始まった古代まで遡ることができる。
1659年には現代人が映写機と呼ぶものに近い「幻灯機」が発明された。
そして19世紀末には、デジタルが登場するつい最近まで使われていた感光性のセルロイド製「フィルム」が誕生する。
現存する最古の映画は「映画の父」と呼ばれるフランス人発明家ルイ・ル・プランスが1888年に撮影した「ラウンドヘイの庭の場面」という映像で、長さわずか2・11秒という。
1893年には発明王のトーマス・エジソンが撮影スタジオを設立。
そして1895年にパリで一般人向けに初めて映画がスクリーン上映される。この「ラ・シオタ駅への列車の到着」を見た観客は、自分たちに向かって突進してくる列車におののいたという。
以後、フィルムノワールやヌーベルバーグなど映画の潮流や変革、特殊撮影技術や撮影機材の発展まで。「七人の侍」や「スター・ウォーズ」などの名作映画の撮影現場の様子などを紹介しながらたどる。一読すれば久しぶりに映画館に足を運びたくなるはず。
(フィルムアート社 2000円+税)