「アナログの逆襲」デイビッド・サックス著、加藤万里子訳
買い物はネットで済ませ、新聞はオンライン版を読み、音楽はワイヤレスのストリーミングサービスで聴く。私たちを取り巻く環境は、毎日のようにデジタルテクノロジーによって刷新されている。
ところが今、さまざまな分野でアナログの魅力が再注目され始めている。デイビッド・サックス著、加藤万里子訳「アナログの逆襲」(インターシフト 2100円+税)では、アナログブームの実態とその背景を読み解いていく。
あらゆるやりとりがメールひとつで済む昨今だが、多くの職場では社員が顔を合わせて直接会話をしたり、協働を促すような環境づくりが進められている。グーグルでは、紙とインクを使った手描きのスケッチでデザインを始めるよう推奨しているという。アナログな手法を取り入れることで創造性が触発されたり、生産性が高まるためだ。
2001年、スティーブ・ジョブズが実店舗のアップルストアをオープンしたとき、多くのアナリストが2年も持たずに潰れるだろうと予測した。ところが今、店内は常に客でごった返し、多くのオンライン専門小売店も実店舗をオープンさせる時代となっている。
本書では他にも、レコード、紙、フィルム、ボードゲームなどの人気を通じ、アナログの隠れた魅力を紹介している。とくに強調されるのが、フィジカル(身体的)であること。デジタルが進化したからこそ、それだけでは満たされないリアルな体験や交流への欲求が高まり、セレンディピティー(偶然の素晴らしい発見)のあるアナログへの支持が高まっているのだ。
今後、あらゆる分野でデジタルとアナログの融合が進むと著者。これまでになかった新しいサービスも生まれそうだ。