「ビートルズはここで生まれた 聖地巡礼 from London to Liverpool」藤本国彦氏
「ビートルズファンの中には、夢を壊したくない、自分のイメージを大事にしたいから『ゆかりの地』には行かない、という人もいます。でも僕は絶対に行ったほうがいいと思うんですよ。だってメンバーが育った家も、ジョンが遊び場にしていたストロベリー・フィールドも、ポールとジョンが出会った教会も、現実に存在して、同じ空気が吸えるんですから。行けば新たな発見もたくさんあります」
本書は「ビートルズゆかりの地」を日本人グループが8日間で巡った珍道中をベースとした、ファンのためのロンドン&リバプール最新ガイド。伝説的映画「レット・イット・ビー」の舞台であるアップル・ビル、曲名にもなったペニー・レインの理髪店など有名な「聖地」はもちろん、ポールが育った5番目の家、ジョージとジョンが通った小学校などマニアックな名所も満載だ。
ツアー開催のきっかけは、著者が講師を務めるビートルズについてのカルチャー講座参加者からの声だった。
「60代の女性から『冥土の土産に連れて行ってほしい』と言われましてね。いつか行ってみたいけど、英語の問題などがあり躊躇している方は多いです。それにファンクラブのツアーなどは効率よくまわれるものの非常に高額で、負担が大きい。でも僕は高額に象徴される権威化や、効率化ってビートルズ的じゃないと思うんです。権威に屈せず革新的で、遊び心を大事にするのがビートルズ。そして『レット・イット・ビー(あるがままに任せる)』。僕もこの精神で、要望に応えて、かつ参加しやすい価格で企画したんです」
遊び心は本書にも満載だ。20人の参加者は40~60代だが、映画のシーンを再現するため路上で本気で転んで流血したり、アビイ・ロードでは有名なレコードジャケットと同じ構図の写真を撮るために4人ずつ何度も横断したり、いい大人が実に楽しそうに「聖地」を堪能する様子がつづられる。
1961年生まれの著者は、いわく「ビートルズ第2世代」。10代の頃から、いつかビートルズに関わる仕事がしたいと夢見てきたと言う。
「僕は5人きょうだいの末っ子で、一番上の姉と兄が持っていたドーナツ盤の『シー・ラブズ・ユー』を中1のときに聴いて、エレキの音にしびれたんですね。それから2カ月に1枚のペースで聴き込んでいって、2年ほどかけてビートルズの全レコードを聴きました。スマホもゲームもないアナログ時代なのが幸いだったかもしれない。集中して、曲にどっぷり浸れましたから」
オールカラーの本書には、豊富な写真と名所ごとの詳細な解説も盛りだくさん。リンゴの生家向かいのレンガ壁に実は「BEATLES」の文字がある、メンバーが頻繁に利用したトライデント・スタジオは驚くほど狭い路地にあるなど、実際に行ってみたことで得られた最新情報も多い。
「ロンドンはまだしも、リバプールのガイドは日本にほとんどありません。だからこの本の地図だけでもかなり役に立つと思いますよ。今年10月にツアー第2弾を開催するんですが、いろいろな事情で現地には行けない方も、この本で雰囲気を感じてもらえたらうれしいですね」
(CCCメディアハウス 2500円+税)