「ポケット版 ドングリさんぽ手帖」宮國晋一写真・文
どれも似たり寄ったりで、特にすぐれたものがないことを「ドングリの背比べ」というが、本書を手にしたら、このことわざが大きな間違いであることを知るだろう。
そもそも、ドングリとはブナ科の樹木になる果実の総称だが、すぐに思い浮かぶのは、あの砲弾形か、それよりもずんぐりしたものかの2、3種類がいいところ。だが、日本には22種も分布、世界では約1000種もあるという。本書は、日本に分布するその全てのドングリを解説してくれるポケット図鑑だ。
ちなみに私たちがよく「帽子」と呼んでいるものは「殻斗」というもので、維管束を通じて必要な栄養分を堅果(ドングリの実の部分)に供給したり、外敵から堅果を守ったりするものらしい。そんな基礎知識から22種すべての木や葉の特徴をドングリの実物大の写真とともに紹介する。
身近な公園などで拾える代表的なドングリがコナラのドングリなのだが、コナラは、葉からして個体差が激しく、形や大きさ、質感に至るまでバリエーションが豊か。ドングリも大きさから形態まで多様でドングリ拾いにはもってこいなのだとか。
他にも、かしわ餅を包むのに葉が利用されている「カシワ」などの落葉樹のドングリ(9種)から、
磨くと漆器のような光沢を放つ沖縄や南西諸島に分布する世界最大級のオキナワウラジロガシなど常緑樹のドングリ(13種)、そして外国のドングリも4種を網羅。
時たま見かける、枝や葉っぱがついたまま地面に落ちている未熟なドングリはハイイロチョッキリという虫の仕業だという。他の仲間が同じドングリに産卵しないよう枝ごと切り落としてしまうらしい。
そんな豆知識もちりばめられ、散歩やトレッキングの格好のお供になってくれそうだ。
(世界文化社 1200円+税)