「斗星、北天にあり」鳴神響一著
物語は、出羽国にある檜山城の城主・安東舜季の嫡男である愛季が、父の突然の死によって弱冠15歳にして8代目当主になるところから始まる。
東の比内には浅利氏や南部氏がおり、南には由利十二頭と呼ばれる小豪族たちが割拠していた。加えて湊安東家の重臣たちの中には檜山安東家からの独立を狙う者たちもおり、愛季は油断のならない状況におかれていた。
そんなある日、愛季は領内の土地をよく知るためお忍びで出かけた先でお供とはぐれてしまい、ある農家で一夜の宿を借りる。そこで米を食べることもできない人々の貧しい暮らしを知り、いつか領内に米を行き渡らせたいという夢を持つようになった。領民に生活の豊かさを与えるため、愛季は東北を治めるべく戦国の世に躍り出ていくのだが……。
2014年「私が愛したサムライの娘」で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビューして以来、「鬼船の城塞」「影の火盗犯科帳」「おいらん若君 徳川竜之進」などの人気作が話題の著者による歴史小説。乱世に負けず秋田の礎を築いた主人公の信念が熱い。
(徳間書店 1800円+税)