第6回角川春樹小説賞受賞 鳴神響一氏に聞く
プロ・アマ問わず、長編エンターテインメント小説を公募する「角川春樹小説賞」。第6回の受賞作「私が愛したサムライの娘」は、全選考委員が満場一致でその実力を称賛した、話題の時代小説である。尾張徳川家に仕える甲賀の忍びを描いた超大作だ。
時代小説といっても、今流行の戦国武将や武家モノでもなく、定番の長屋人情モノでもない。女忍者が密命を全うすべく暗躍する「忍び」の世界を描いた異色作だ。
「確かに忍びモノは流行ではありませんが、無名の人物を書きたかったんですよ。そのほうが自由に書けるかなと。ただ、武家社会に生きる武士では、行動の制約が非常に大きく、自由度が失われる。武術を駆使する忍びであれば、ある種の『闊達さ』も描けるなと思ったんです」
今は忠義や建前を重んじる武士が持てはやされる時代。果たして忍びの魅力は、どんなところにあるのか。
「天然自然の理に抗わないところかな。自然に逆らうことなく武術を駆使し、自分の身を守る。『名を捨て実を取る』というか。そこが面白いと思いますね」