「知れば知るほど面白い!クセがつよい妖怪事典」荒俣宏監修、佐古文男・画と文
SNSであらゆる出来事が瞬時に世界中に配信される時代、妖怪なんているわけがないとあきれ顔の人に忠告。
かの水木しげる大先生いわく、妖怪は見えるものではなく「かんじるもの」だそうだ。そして「子供や妖怪感度が高い人はたまに見ることがある」という。
本書は、妖怪感度を磨くのにぴったりの面白事典。日本には1000種類を超える妖怪がいるそうだが、その中から特に「クセがつよい」妖怪たちをイラストで紹介する。
妖怪は人を驚かせたり、化かしたり、悪さをする怖い存在だと思いがちだが、すべてがそうとも限らない。まずは「脱力系のユルかわ妖怪」たちが登場する。
与謝蕪村が各地で見聞した妖怪伝承をもとに描いた「蕪村妖怪絵巻」に出てくる「瓜侍」と「西瓜侍」は、何があったか分からないが焦って走り回るだけの妖怪。他にも、川で小豆を洗うだけの「小豆洗い」や、厚化粧のおばあちゃん妖怪「白粉婆」など、なんともユニーク。江戸っ子にとって妖怪は恐れるものではなく、むしろ笑いの対象だったようだと著者はいう。
続く「クセがつよい妖怪」の章に出てくるのは、江戸時代に実在した稲生平太郎という少年が体験した記録「稲生物怪録」に描かれる妖怪たちなど。稲生少年が隣人と「百物語」をしたところ言い伝え通り、夜ごと「女の逆さ首」などが現れ、30日間も続いたという。
その他、川辺に2人で並んで話し続ける「川男」や、普通の女性にしか見えないのに、寝床に就くと巨大化する「ねぶとり」、自分のうんこをなめるように強要する(なめるとおいしい柿の味がするらしいが)「柿男」などの「ヤバい妖怪」まで80体を網羅。
子供と一緒に楽しみながら妖怪感度を高めよう。
(小学館 1100円+税)